空気のにおい

時々楽しい

彼氏の入学式に行きました。感想。

ざっと書く形になってしまうが、非常に感銘を受けたり、感動した場面がいくつかあった。

まず、荘厳なパイプオルガンの姿が、演奏時に色を変えていくところをはっきりと覚えている。

始まりにBWV 552/1が奏でられた。別室のスピーカーから流れている音色や、映像のパイプオルガンに夢中になった。

これを目の前で感じた彼はなんて幸せものなのだろうと思った。

入学式が終わるころにもう一曲演奏された。BWV 552/2である。

ここでパイプオルガンはアメジストのような紫色に光り輝いていた。見蕩れるとはこういうことかと知った瞬間だった。直接見ていたらあまりの感動で号泣していたかもしれない。

実際に軽い陶酔状態に陥りそうになったが、ただでさえ音楽科の方の親御さんたちに囲まれビクビクしていたので、なんとか気を失わずに済んだ。

この学校の学長は、一見すると「え?…たぬき?」と言ってしまいそうな、全体的に穏やかそうな、丸くてなで肩の容貌である。

失礼な言い方だが、それぐらい人畜無害というか、気の優しそうなお方である。

実際、言葉の一つ一つに生徒に対しての愛を感じた

「新入生の皆様、おめでとうございます!」から続く言葉はとても誠実だった。

「芸術は嗜好品と捉えられがちですが、それらを作り上げ、感じられることこそが人間という証なのです」

「音楽と美術は密接に繋がっています。音楽科の方は美術館へ。ここの学生証があれば無料で入館できます。美術科の方は是非演奏会の優待を活用してください。」
そして、そうかと思うと突然胸元から上野動物園の年間パスポートを取り出し、

「上野には沢山の美術館等があり、それらを無料で利用できるのは先述の通りですが、実は上野動物園だけは無料ではないんです。だから、年間パス、あるので買ってください。だいたい年間四回ぐらい行けば元を取れます。」

こんなことを仰ったから、生徒も緊張が解れて笑った。別室にいた関係者方や私も思わず笑った。

そんなユニークな一面も見受けられる学長だが、実はこの言葉達の前に学長直々の演奏があった。

ヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲集「四季」より、「春」の第三楽章が演奏された。

誰しも耳にしたことのある楽曲だが、今まで聴いてきた中でも一番強く印象に残った。

共感覚を想わせる抽象的な映像も相まって、非常に高いレベルの芸術がそこにあると感じた。

正しく、これこそが真の音楽と美術の融合であった。

何気なく聴いていたあの曲が、本来こんなにも美しいものなのかと、気づかざるを得なかった。

 

こんなこともあった。閉式の際に、教授らが一人一人退場していき、最後の最後に学長が退場する…と思った時に、その学長はひゅっと振り返って、

口元に手でラッパを作って「皆さん、ご入学おめでとうございます!」と一言。

そして、面を食らったような反面、思わず嬉しい気持ちになった生徒や保護者たちを尻目に、颯爽と退場なさったのである。

 

式というものが好きな人はほとんどいないだろうが、今回だけは、本当に見ていて気持ちの良い、居心地のよいものだった。

式の本来の姿を見ることが出来たように感じ、有難い気持ちになった。

 

彼の学生生活が良いものとなるように、私も協力していかなければならないと強く感じた。

合格した時のことを思うと、今でも涙がこみ上げる。まだ人生の始まりに過ぎないことは頭で分かっているのに。

この記事を書いている今でも、あのパイプオルガンを思い出して、見蕩れてしまっている。